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♪1つ人よりハゲがある。2つ踏まれたハゲがある。3つ醜いハゲがある・・・10でとうとう丸ハゲじゃー


この数え歌を羽毛田公一が始めて目にしたのは、漫画「はだしのゲン」を読んだときだった。10歳だった。この「はだしのゲン」は、小学校の担任が反戦教育の一環として購入し、児童に薦めていたものだった。しかしながら子どもとは無邪気で残酷な生き物である。クラスの1人が公一に向けて歌い始め、それからは半ば「いじめ」のように公一に向けて合唱する機会が増えていった。
ちなみに公一は「はげた」ではなく「はけだ」なのだが、クラスメイトにとってはそんなことはお構いなしだ。それいらい、公一は「はげた」と呼ばれていた。


少しつらい記憶が蘇るものの、公一は毎年八月になると、「はだしのゲン」を読んでいる。昨年はSAに停めた車の中で読んだ。今年は仕事場である雑居ビルで読んでいる。
そのとき公一の携帯電話が鳴った。
「お仕事の依頼をしたいのですが・・・」
相手は、公一の上玉顧客である便利屋からであった。
「今日はどいったご用件で?」
「いつもの調査ですよ。くわしいことはいつもの喫茶店で。11時に待ち合わせでいかがですか?」
「わかりました。では後ほど」
この便利屋は大河原と名乗っている。が、本当の名前かどうかはわからない。そんなことは公一にとってはどうでも良いことだ。依頼を受け、短時間で仕事をこなし、報酬をキャッシュで受け取る・・・それが完結すればひとつの仕事が終わる。


10時も過ぎた頃、公一は「喫茶クラウン」に向かった。



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やさぐれ王子

Author:やさぐれ王子
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